壁に穴を開けない家具転倒防止5選|賃貸の地震対策を宅建士が解説

壁に穴を開けない家具転倒防止5選|賃貸の地震対策を宅建士が解説
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東京消防庁の調査では、近年発生した地震でけがをした人の約3〜5割は「家具類の転倒・落下・移動」が原因でした。それなのに賃貸暮らしの人ほど「壁に穴を開けられないから、うちは対策できない」と諦めがちです。実はこれ、もったいない思い込みです。東京消防庁自身が、穴を開けない器具を2つ組み合わせる方法を公式ハンドブックで紹介しています

筆者は宅地建物取引士(宅建士)として、住まいとお金の情報を発信しています。この記事では、国土交通省の原状回復ガイドラインで「退去時にどんな傷が借主負担になりうるか」を先に押さえ、そこから逆算して壁に穴を開けずに転倒リスクを下げる定番グッズ5タイプを、メーカー公表の耐荷重・試験条件つきで紹介します。読み終えるころには、自分の部屋のどの家具に何を付けるかが決まっているはずです。

目次

結論:賃貸の地震対策は「穴を開けない器具×2つ併用」が正攻法

先に結論です。東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」は、「壁や家具に穴を空けられない」という質問に対して、こう答えています。穴を開けなくて済む器具を2つ以上組み合わせる方法があり、例えばストッパー式(もしくはマット式)とポール式(突っ張り棒)を組み合わせると、最も効果の高いL型金具(ネジ固定)と同等の効果が期待できる——賃貸住宅の住人に向けた、公的機関の明確な回答です。

つまり「穴を開けない対策は妥協案」ではありません。組み合わせ方さえ間違えなければ、賃貸のままで有効な対策が組めます。この記事では、その組み合わせの部品になる5タイプ(突っ張り棒・耐震マット・粘着ストッパー・冷蔵庫ベルト・テレビ用耐震ベルト)を順に見ていきます。

地震のけがの約3〜5割は家具類が原因【東京消防庁データ】

まず、対策の優先度を上げるべき理由を数字で確認します。東京消防庁の「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」によると、近年発生した地震(平成15年宮城県北部地震〜平成28年熊本地震)でけがをした原因を調べると、約30〜50%の人が家具類の転倒・落下・移動によるものでした。地震そのものではなく、部屋の中の家具が凶器になっているのです。

また、東日本大震災の際に東京消防庁が都内で行ったアンケート調査では、家具類の転倒・落下・移動の発生割合は1〜2階で16.8%、6〜10階で31.9%、11階以上では47.2%と、高層階ほど高い結果でした。マンション上層階の賃貸に住んでいる人ほど、他人事ではありません。

どのくらいの揺れで家具は動くのでしょうか。気象庁の震度階級関連解説表では、震度5弱で「固定していない家具が移動することがあり、不安定なものは倒れることがある」、震度6弱で「固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある」とされています。裏を返せば、対策の分かれ目は「固定しているかどうか」です。

退去時に請求されやすい傷・されにくい傷|国交省ガイドライン早見表

「それでもネジ止めの金具が一番効くんでしょ?」——そのとおりです。ただし賃貸では、壁の傷が退去時のお金の話に直結します。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、壁の傷の負担区分を次のように整理しています。

壁にできた跡・穴ガイドライン上の整理費用負担
画鋲・ピン等の穴(下地ボードの張替えが不要な程度)通常の生活で生じる損耗貸主負担と整理
ポスターや絵画を貼った跡通常の生活で生じる損耗貸主負担と整理
くぎ穴・ネジ穴(重量物をかけるために開けたもので、下地ボードの張替えが必要な程度)通常の使用を超えると判断されることが多い借主に原状回復義務が発生しうる

つまり、重量物を支えるためのネジ穴・くぎ穴は、下地ボードの張替えが必要な程度だと借主負担になりうる——L型金具でのネジ固定は、賃貸ではまさにここに当たる可能性があります。しかも注目すべきは、このくぎ穴・ネジ穴の項目でガイドライン自身がこう述べていることです。「地震等に対する家具転倒防止の措置については、予め、賃貸人の承諾、または、くぎやネジを使用しない方法等の検討が考えられる」。穴を開けない器具を選ぶことは、国のガイドラインが示している検討ルートそのものなのです。

3つだけ補足します。第一に、ガイドラインは法的拘束力を持つものではなく、実際の負担は賃貸借契約書と個々の損耗の程度で個別に判断されます(借主負担となる場合も、経過年数の考慮や負担範囲の限定という考え方があり、当然に全額請求されるわけではありません)。第二に、2020年4月施行の改正民法621条で、通常損耗・経年変化が原状回復義務の対象外であることが条文上も明記されました。第三に、だからこそ「契約書の特約を確認してから器具を選ぶ」のが宅建士としてのおすすめの順番です。この点は後半のチェックリストで扱います。

宅建士が立てた選定3基準|「穴を開けない」だけでは足りない

この記事で紹介する5点は、次の3基準で選びました。

  • ①壁・天井・床に穴を開けずに設置できる:ネジ・くぎを使わず、賃貸の負担区分の争点を最初から作らない
  • ②メーカーが耐荷重や試験条件を公表している:「地震に強い」ではなく、数字と試験条件で比べられるものだけ
  • ③退去時の撤去まで考えられている:粘着式は取り付け可能な壁面・剥がし方がメーカーごとに指定されています。凹凸のある壁紙には使えない製品もあるため、適合条件を確認してから買う

とくに②は大事です。転倒防止グッズは効果が目に見えない商品なので、試験条件まで公表しているメーカーを選ぶことが、数少ない確かな見分け方になります。以下の5点は、いずれも公表値を出典付きで記載しました。

壁に穴を開けない家具転倒防止グッズ5選

価格は変動するため各商品ページでご確認ください。リンクをクリックしても、必ず購入する必要はありません。なお、転倒防止効果は家具の形状・重さ・設置環境によって変わります(お住まいの環境により効果には個人差があります)。

①突っ張り棒(ポール式):平安伸銅工業 家具転倒防止突っ張り棒 REQ-35

家具と天井の間に突っ張って固定する、穴を開けない対策の主役です。突っ張り棒の老舗・平安伸銅工業の耐震ポールで、メーカー公表値は取付高さ35〜50cm・参考耐圧200kg・2本組。サイズ展開が最小22cm対応から100cmまであるので、先に「家具の上から天井までの高さ」を測ってから合うサイズを選んでください。設置のコツは東京消防庁ハンドブックが具体的で、家具の両端・できるだけ壁側の奥に立て、天井側に十分な強度があることを確認します(強度が足りない天井は当て板で補強)。▶ 平安伸銅の家具転倒防止突っ張り棒(35〜50cm)をAmazonで見る

②耐震マット:プロセブン耐震マット P-N50C

家具の底に貼るだけのジェル状マット。プロセブンはメーカーが「震度7クラス対応」をうたい、官公庁や企業・病院などでの採用実績と全省庁統一資格の取得を公表している、このジャンルの定番ブランドです。P-N50Cは50×50×5mmの4枚入で、耐震荷重100kg(4枚使用時の目安)。テレビ台・電子レンジ・小型の棚のような「突っ張り棒を立てるほどではない家具」に向きます。後述のとおり、背の高い家具への単独使用は適さないので、あくまで併用の部品と考えてください。▶ プロセブン耐震マット(50mm角・4枚入)をAmazonで見る

③粘着ストッパー式:不二ラテックス 不動王T型固定式 FFT-009

壁の上部と家具の天面をT字プレートと衝撃吸収素材でつなぐ、貼るだけの固定具です。不動王シリーズの強みは試験の透明性で、UR都市機構技術研究所での神戸波(阪神・淡路大震災の再現波)震度7の三次元加振実験で移動・転倒防止効果を確認したとメーカーが試験機関名まで公表しています。T型固定式は高さ215cm・重さ150kgまで実証済み(メーカー公表値)、耐久年数8年。梁や傾斜天井で突っ張り棒が立てられない部屋の代替としても使えます。取り付け可能な壁面条件はメーカー指定があるため、購入前に確認を。▶ 不動王T型固定式(FFT-009)をAmazonで見る

④冷蔵庫用:サンワサプライ 冷蔵庫ストッパー QL-E90KN

倒れたら一人では起こせない冷蔵庫は、専用品で。接着パッド付きフックを冷蔵庫と壁面に貼り、ゴムベルトでつなぐ方式で、壁面の穴あけ工事が不要、取り付けの際に冷蔵庫を動かす必要もありません。メーカー公表値は耐震度6強・対象物重量160kg以下(1セット2本使用時)・家庭用冷蔵庫600L以下対応。ゴムベルトが揺れの衝撃を吸収する設計です。▶ サンワサプライの冷蔵庫ストッパー(QL-E90KN)をAmazonで見る

⑤テレビ用:エレコム 耐震ベルト TS-002N2(粘着シールタイプ)

薄型テレビは重心が高く、前方に倒れやすい家電です。エレコムの粘着シールタイプは設置台や壁面に穴を開けずにテレビ背面と台をベルトでつなぎ、〜75V型対応・東日本大震災や熊本地震など震度7相当の振動試験をクリア(メーカー公表)。メーカー自身が「揺れによる転倒を最小限に抑えるためのもの」と明記しているとおり、被害ゼロを保証する商品ではありませんが、テレビ対策の第一歩としては手頃です。東京消防庁ハンドブックは、テレビ本体の固定に加えてテレビ台自体の転倒対策もセットで行うことを勧めています。▶ エレコムのテレビ用耐震ベルト(TS-002N2)をAmazonで見る

【家具別】効果を高める組み合わせ方

冒頭の結論のとおり、鍵は「単独で使わないこと」です。東京消防庁が震度6強の揺れを再現した実験では、マット式やストッパー式の単独使用は効果が小さく、ポール式(突っ張り棒)とマット式・ストッパー式を併用すると効果が高いという結果が示されています。家具ごとの基本形はこうなります。

対象基本の組み合わせポイント
背の高い本棚・食器棚・タンス突っ張り棒+耐震マット(またはストッパー)上下セットでL型金具と同等の効果が期待できる(東京消防庁)
冷蔵庫専用ベルト(QL-E90KNなど)取扱説明書の指定方法を優先
テレビ耐震ベルト+テレビ台側の対策本体と台、両方を対策する
電子レンジ・小型の棚耐震マット背が低く軽い物はマット中心でOK
梁・傾斜天井で突っ張れない部屋不動王T型+耐震マット壁面の適合条件を事前確認

あわせて、東京消防庁のチェックリストには器具以外の対策も並んでいます。重い物をできるだけ下に収納する、寝る場所や避難路(ドアまでの通り道)を塞がない配置にする、扉には開放防止器具・ガラスには飛散防止フィルム。お金をかけずに今日できる項目から始めても構いません。

設置前チェック:契約書と壁の確認だけは先に

  • 賃貸借契約書の特約を確認する:壁の使用や退去時の負担について個別の特約がある物件もあります。ガイドラインより契約内容の確認が先です
  • 迷ったら管理会社・大家さんに一報:ガイドライン自身が「予め、賃貸人の承諾」を選択肢に挙げています。連絡ひとつで退去時の争点を大きく減らせます
  • 粘着式は壁面・家具側の材質を確認:凹凸壁紙・砂壁などには取り付けられない製品があります。剥がすときはメーカー指定の手順で
  • 家具の上から天井までの高さを測る:突っ張り棒はサイズ選びがすべて。金属製メジャーの使い方は一人暮らしの最低限リストの採寸パートも参考にしてください

なお、退去時のお金の考え方(敷金・原状回復・特約の有効性)は入居時から知っておくと交渉で損をしません。賃貸の初期費用を抑える方法|宅建士が教える削れる項目と交渉のコツで詳しく解説しています。

賃貸の家具転倒防止に関するよくある質問

Q. 突っ張り棒だけで十分ですか?

A. 東京消防庁の実験では、ポール式(突っ張り棒)は単独より、マット式やストッパー式と上下で併用したほうが効果が高いとされています。併用でL型金具(ネジ固定)と同等の効果が期待できるというのが同庁ハンドブックの説明です。天井側の強度が足りない場合は当て板での補強も必要になるため、「立てて終わり」にしないことが大切です。

Q. 粘着マットを剥がした跡は退去時に請求されますか?

A. 国交省ガイドラインに粘着式の転倒防止器具の跡そのものを直接定めた項目はなく、損傷の程度や原因、契約内容によって個別に判断されます。床や家具の底面に貼るマット式は壁紙を傷めるリスク自体が小さく、壁面に貼るタイプはメーカー指定の壁面条件と剥がし方を守ることでリスクを下げられます。心配な場合は、設置前に管理会社へ確認しておくのが確実です。

Q. 全部の家具はできません。どこから対策すべきですか?

A. 東京消防庁ハンドブックは、すべての家具への対策が難しい場合、寝室に家具を置かない・倒れる方向を考えた配置にするなどの工夫をしたうえで、重量や高さのある家具を優先して、できる家具から順に対策することを勧めています。優先順位をつけるなら「寝ている場所に倒れてくる家具」と「避難路を塞ぐ家具」からです。

Q. ネジ穴を開けてしまったら退去時にいくら請求されますか?

A. 金額は物件や損傷の程度によるため一律には示せません。ガイドラインの考え方では、重量物のためのネジ穴で下地ボードの張替えが必要な程度なら借主負担になりえますが、その場合も経過年数の考慮や負担範囲の限定(原則として毀損箇所を含む範囲)という調整があり、当然に高額請求が正当化されるわけではありません。実際の負担は契約書と個別事情で決まるため、まずは契約書の確認を。個別のトラブルは自治体の相談窓口や専門家に相談してください。

まとめ:9月1日を待たずに、今日1つ設置する

  • 地震のけがの約3〜5割は家具類の転倒・落下・移動が原因(東京消防庁)。震度5弱から固定していない家具は動き始める
  • 賃貸の正攻法は「穴を開けない器具×2つ併用」。突っ張り棒+マット(またはストッパー)でL型金具と同等の効果が期待できる
  • ネジ穴は退去時に借主負担になりうる一方、画鋲程度の穴は通常損耗——国交省ガイドラインの境界線を知って器具を選ぶ
  • 迷ったら契約書の特約確認と管理会社への一報。それだけで退去時の争点はほぼ消える

防災の日(9月1日)は毎年やってきますが、地震は日付を選んでくれません。この記事を閉じる前に、まず一番背の高い家具の「上から天井までの高さ」を測る——それが今日できる最小の一歩です。これから家具を揃える人は一人暮らしの最低限リストで「そもそも倒れる家具を増やさない」発想も、あわせてどうぞ。


この記事を書いている人

AIで小さな事業をつくり、仕組みに渡す実験記録。
AI・コード・自動化を使って小さな事業や収益装置を実際につくり、試した結果・失敗・かかった時間まで記録しています。

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この記事を書いた人

AI・コード・自動化を使って、小さな事業や収益装置を実際につくっています。作ったもの、試した結果、うまくいかなかったこと、かかった時間をそのまま記録しています。宅地建物取引士/キャリアコンサルタント。

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