賃貸で在宅ワーク、床の傷は誰の負担?宅建士が選ぶチェアマット対策

賃貸で在宅ワーク、床の傷は誰の負担?宅建士が選ぶチェアマット対策
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「退去の立会いでは『特に原状回復が必要な箇所はない』と言われたのに、後日、床の傷の修繕費用を求められた」——国民生活センターの相談情報ページの筆頭に載っている、実際の相談事例です。賃貸住宅の原状回復トラブルの相談は2025年度だけで14,711件(全国の消費生活センター等に寄せられたPIO-NET登録件数)。そして在宅ワークが定着したいま(国土交通省の令和7年度調査でテレワーク実施率16.8%)、床トラブルの新しい火種になっているのがデスクチェアのキャスター傷です。

筆者は宅地建物取引士(宅建士)として、住まいとお金の情報を発信しています。この記事では、国土交通省の原状回復ガイドラインで「床の傷がどう扱われるか」を先に読み解き、そこから逆算して数千円で打てる床保護の対策を紹介します。結論を先に言うと、フローリングの傷には「長く住めば負担が減る」という常識が通用しません。だからこそ、敷く価値があります。

目次

キャスター傷は誰の負担?——ガイドラインの正確な読み方

まず前提から。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(現行の再改訂版)は、床の損耗を次のように区分しています。

床にできた跡・傷ガイドライン上の整理
家具の設置による床・カーペットのへこみ、設置跡通常損耗=貸主負担側(家具の設置は必然的なもの、という考え方)
引越作業で生じたひっかきキズ借主の善管注意義務違反・過失に該当する場合が多い=借主負担側
賃借人の不注意による色落ち・故意の毀損借主負担側

ここで「ガイドラインではキャスター傷は借主負担と明記されている」とする解説も見かけますが——実は、ガイドラインの原文に「キャスター」という言葉は一度も出てきません(本文・別表を全文検索しても0件)。正確にはこうです。ガイドラインは借主負担側(B区分)を「賃借人の使い方次第で発生したりしなかったりするもの」と定義しており、キャスターで床を繰り返し傷つけた場合は、ひっかきキズと同じ「善管注意義務違反・過失」の枠組みに照らして借主負担と判断されることが多い——つまり個別の明記ではなく、区分の考え方からの解釈です。「置いただけのへこみ」はセーフ側、「動かして削った傷」はアウト側に寄る、と覚えてください。

「長く住めば安くなる」が効かない、フローリングの落とし穴

壁紙などの負担額は、住んだ年数に応じて減っていくのが原則です(クロスは6年で残存価値1円)。ところが——ガイドラインは「フローリング等の部分補修については、経過年数を考慮することにはなじまない」とし、部分補修の費用は毀損を発生させた借主の負担とするのが妥当、と整理しています。つまり何年住んでいても、キャスター傷の部分補修費は減額されないのです(フローリング全体を張り替えるほどの毀損の場合のみ、建物の耐用年数で負担割合を算定)。負担範囲も原則㎡単位で、毀損が複数箇所にわたると当該居室全体まで広がりうるとされています。

金額のイメージも見ておきましょう。国民生活センターには、原状回復費用として「約20万円を請求された」「約90万円を請求され、見直しを求めて70万円になった」といった相談が寄せられています(いずれも個別の相談事例で、相談者の申出内容にもとづくもの。平均額ではありません)。一方、これから紹介する床保護グッズは2,000〜4,500円前後。どちらを先に払うかの話だと考えると、答えは明らかです。

ただし「必ず借主負担」でもない——3つの留保

公平のために、逆方向の留保も3つ。第一に、ガイドラインに法的拘束力はなく、実際の負担は賃貸借契約書と個々の損耗の程度で個別に判断されます(通常損耗まで借主負担とする特約は、客観的・合理的理由など3つの要件を満たす必要があり、無制限には有効になりません)。第二に、2020年4月施行の改正民法621条は、通常の使用による損耗・経年変化が原状回復義務の対象外であることを条文で明記しました。第三に、「家具の設置によるへこみ」と「キャスターの引きずり傷」の線引きはケースバイケースで、ガイドライン自身も区分は一般的な事例の想定だと述べています。請求されたら鵜呑みにせず内訳を確認する——これも宅建士としてお伝えしたい防御策です。

宅建士が考える、賃貸向け床保護グッズの選び方

  • サイズは椅子の可動域より一回り大きく:傷は「マットからはみ出した1回」で付きます。立ち座りで椅子が下がる後方まで覆う
  • 裏面の滑り止めと対応床材を確認:粘着で床に貼り付けるタイプは剥がし跡のリスクがあるため賃貸では避ける。畳・クッションフロア・床暖房の部屋は対応表記のある製品を選ぶ
  • 「マットを敷きたくない」なら椅子側を変える:キャスターにカバーを履かせる、ウレタン製キャスターに交換する、という選択肢もあります

価格は変動するため各商品ページでご確認ください。リンクをクリックしても、必ず購入する必要はありません(床材との相性や効果には個人差があります)。

①チェアマットの定番:Bauhutte デスクごとチェアマット BCM-120

ゲーミング家具大手Bauhutteの定番マット。メーカー公表仕様は約900×1200mm・厚さ約1.5mm・PVC素材・裏面滑り止め加工(クリア色のみ滑り止めなし)で、デスクの脚からチェアの可動域までを1枚で覆う「デスクごと」設計です。水拭きできるので飲み物をこぼしても拭くだけ。より広く覆いたい人には160・180サイズ(最大約1600×1800mm)もあります。▶ Bauhutte デスクごとチェアマット(120×90cm)をAmazonで見る

②敷かない派に:WAKI キャスタースリッパ GK-501

キャスターに「履かせる」ゴム+フェルトのカバーです。1922年創業の金物メーカー・和気産業の製品で、メーカー公表仕様は5個入・直径50〜60mmの双輪キャスター対応・フローリング用(クッションフロア・畳・カーペットは使用不可と公式に明記)。部屋の見た目を変えたくない人、マットの掃除が面倒な人向きの発想です。▶ WAKI キャスタースリッパ(5個入)をAmazonで見る

③根本対策:サンワサプライ ウレタンキャスターに交換

椅子のキャスター自体を、床当たりのやわらかいウレタン製に差し替える方法です。サンワサプライのSNC-CAST3は「床にキズの付きにくいウレタン製」・直径60mmの大型キャスター用・5個入(メーカー公表)。ただし取付軸の規格は椅子により異なり、メーカーは自社チェアの適合リストを公開する形をとっています。お使いの椅子の軸径を確認してから購入してください(合わなければ返品条件の確認を)。▶ サンワサプライ 大型ウレタンチェアキャスター(5個入)をAmazonで見る

このほか、デスク一帯を丸ごと覆いたい場合はEVA素材のジョイントマットを敷き詰める方法もあります(大判60cm・厚さ2cm級が定番。防音性も上がるため、椅子を引く音が階下に響くのが気になる人にも向きます)。

敷く前に5分だけ——「いまの床」を写真で残す

対策グッズより先にやってほしいことが、ひとつだけあります。デスク周りの床の現状を、日付がわかる形で写真に撮っておくことです。国民生活センターも、写真を撮ったりメモを取ったりしながら住宅の入居時の状況を確認するよう呼びかけています(入居時・退去時についての助言)。入居からしばらく経っていても、「マットを敷く前の状態」の記録は退去時の話し合いであなたを守る証拠になります。すでに傷がある場合は、自己判断で補修グッズを使わず、まず管理会社に相談を——素人補修はかえって毀損の範囲を広げたと判断されるリスクがあります。

賃貸のチェアマット・床の傷に関するよくある質問

Q. すでにキャスター傷がついてしまいました。どうすべきですか?

A. まず現状を写真で記録し、これ以上広げないためにマット等で保護してください。市販の補修グッズで自分で直すのは、賃貸ではおすすめしません。仕上がりによっては毀損を広げたと評価されるリスクがあるためです。退去が近いなら、立会い前に管理会社へ正直に相談するほうが、結果的に話がこじれにくくなります。

Q. 畳やクッションフロアの部屋でも同じ対策でいいですか?

A. 製品の対応床材を必ず確認してください。今回紹介したキャスタースリッパはフローリング専用で、畳・クッションフロア・カーペットは使用不可とメーカーが明記しています。なお負担区分の考え方も床材で異なり、ガイドラインでは畳は原則1枚単位、カーペット・クッションフロアは6年で残存価値1円となる形で負担割合を算定するとされています。

Q. 床暖房の部屋でもチェアマットを使えますか?

A. 製品によります。PVC製マットには床暖房使用時の対応を保証しないものがあるため、床暖房の部屋では「床暖房対応」の表記がある製品を選んでください。対応表記がない場合はメーカーに確認するのが確実です。

Q. 退去時の請求額に納得できないときは、どこに相談すればいいですか?

A. まず請求の内訳(どの傷に・どの工事単位で・いくらか)を書面で求め、国交省ガイドラインの考え方と突き合わせてください。それでも折り合わない場合は、消費者ホットライン188(お近くの消費生活センターにつながります)に相談できます。全国の消費生活センター等には原状回復に関する相談が毎年度1.3万件超寄せられており、珍しいことではありません。

まとめ:数千円のマットは「退去日の保険」

  • ガイドライン原文に「キャスター」の明記はないが、使い方次第の傷=借主負担側の枠組みで判断されることが多い。設置のへこみはセーフ側、引きずり傷はアウト側
  • フローリングの部分補修は経過年数で減額されない。「長く住んだから大丈夫」は床には通用しない
  • 対策はマット・キャスターカバー・キャスター交換の3系統。いずれも数千円で、原状回復の請求事例(約20万円等の相談例)と比べれば安い保険
  • 敷く前に床の現状を写真で記録。すでにある傷は自己補修せず管理会社へ相談

原状回復まわりの知識は、壁でも役に立ちます。地震対策で壁に穴を開けたくない人は壁に穴を開けない家具転倒防止5選を、これから引越す人は入居時のお金の話(賃貸の初期費用を抑える方法)もあわせてどうぞ。在宅ワーク環境そのものを整えたい人には副業用パソコンのスペックの見方もあります。


この記事を書いている人

AIで小さな事業をつくり、仕組みに渡す実験記録。
AI・コード・自動化を使って小さな事業や収益装置を実際につくり、試した結果・失敗・かかった時間まで記録しています。

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AI・コード・自動化を使って、小さな事業や収益装置を実際につくっています。作ったもの、試した結果、うまくいかなかったこと、かかった時間をそのまま記録しています。宅地建物取引士/キャリアコンサルタント。

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