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国土交通省の住宅市場動向調査(令和7年度・三大都市圏の民間賃貸入居世帯対象)では、物件探しでインターネットを通じて情報収集した世帯は71.5%(複数回答)にのぼる一方、VRやARツールで内見した世帯は0.8%にとどまりました。つまり、探すのはネットでも、確かめられるのはほぼ現地だけ。その貴重な内見の時間を、手ぶらで迎えるのはもったいなさすぎます。
筆者は宅地建物取引士(宅建士)として、住まいとお金の情報を発信しています。この記事は、よくある「持ち物総選挙」ではありません。内見で測るべき場所5つから逆算して、必携7点を決める——実務の順序で組み立てたチェックリストです。読み終えるころには、当日バッグに入れる物と、部屋で最初に開くべきメジャーの行き先が決まっています。
結論:内見の持ち物チェックリストは7点で足りる
まず一覧です。スクショ保存してそのまま使ってください。
| 必携7点 | 何に使うか |
|---|---|
| ①スマホ | 写真・動画・ライト・方位・メモ。内見の記録装置 |
| ②金属製メジャー(5.5m) | 本記事の主役。測る場所5つすべてで使う |
| ③間取り図のコピー | 採寸値・コンセント位置を直接書き込む |
| ④筆記用具+クリップホルダー | 立ったまま書ける台。図面を挟んで移動 |
| ⑤携帯スリッパ | 空室・セルフ内見対策。長時間の内見でも足が汚れない |
| ⑥手持ち家具・家電のサイズメモ | 現地の実測値と突き合わせる「答え合わせ表」 |
| ⑦身分証 | 内見申込みや入居申込みで求められることがある |
あれば便利なのは、レーザー距離計(天井高など1人で測りにくい距離用)・コンパクト水平器・検電ペン・スマホ用広角レンズの4つ。このうち前の2つは後半で選び方まで紹介します。
なぜ「測る」が9割なのか|賃貸の相談は年約3.5万件
全国の消費生活センター等に寄せられた「賃貸アパート・マンション」に関する相談は、2024年度で34,838件(国民生活センター・PIO-NETより。退去時の原状回復トラブルなどを含む区分全体の件数)。商品・役務等別で全国4位という、トラブルの多いジャンルです。国民生活センターは2026年2月の注意喚起でも、「写真を撮ったりメモを取ったりしながら、住宅の入居時の状況をしっかり確認しましょう」と呼びかけています(入居時・退去時についての助言)。記録の習慣は、内見の段階から始めておくのが確実です。
もうひとつ。総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、2026年3月の市区町村間移動者数は約91.6万人で、1月(約32.8万人)の約2.8倍でした。引越しがピークの時期は人気物件の動きが速く、内見はどうしても駆け足になります。「雰囲気は良かったけど、何も測らずに帰ってきた」を防げるのは、当日の持ち物だけです。
内見で測る場所5つ|どこを・何のために測るか
宅建士が実務で「ここを測らずに決めると後悔しやすい」と考える場所は、次の5つです。
| 測る場所 | 決まるもの | 測るポイント |
|---|---|---|
| ①洗濯機置き場 | 置ける洗濯機のサイズ | 防水パンの「内寸」+床から蛇口下端までの高さ |
| ②冷蔵庫置き場 | 置ける冷蔵庫のサイズ | 幅・奥行・高さの3辺+コンセント位置 |
| ③窓まわり | カーテンのサイズ | カーテンレールの固定ランナー間の幅+ランナーから床までの丈 |
| ④搬入経路 | 大型家具家電を運び込めるか | 玄関ドアの幅と高さ・廊下の曲がり角・エレベーターの間口と奥行 |
| ⑤天井高・梁下 | 背の高い家具の置き場所 | 最も低い部分(梁・下がり天井)の高さ+壁の出っ張り |
①洗濯機置き場は、外枠ではなく防水パンの縁の内側から内側(内寸)を測るのが鉄則です。パナソニックの設置ガイドも、本体サイズに加えて防水パンの内寸・蛇口の高さ・排水口の位置の確認を求めています。蛇口が低いと、幅が足りても本体上面と干渉して置けないことがあります(特にドラム式)。
②冷蔵庫置き場は3辺に加えて「余白」が要ります。冷蔵庫は放熱のため上面・側面に隙間が必要で、必要な寸法は機種ごとに据付説明書で指定されています。だから持ち物⑥の「手持ち家電のサイズメモ」が効くわけです。現地の実測値と機種の要求値、両方が揃って初めて置けるかどうか判定できます。
③窓まわりで測るのは窓ではなくカーテンレールです。カーテン専門店の採寸ガイドでは、幅は固定ランナー(レール両端の動かない輪)の間の実測×約1.05、丈はランナーの穴から測るのが目安とされています。窓枠基準で測ると「丈が足りず外から見える」失敗につながります。
④搬入経路は上位の内見記事でも意外と手薄なポイントです。UR都市機構の内見ガイドでも、玄関・ドア・廊下の幅と高さを測って大型家具の搬入可否を確認するよう挙げられています。「新居に冷蔵庫が入らない」は引越し業界で定番のトラブルとして繰り返し解説されており、経路によっては吊り上げ搬入などの追加費用が発生することもあります。
⑤天井高・梁下は、図面に出にくい落とし穴です。梁や下がり天井で局所的に低くなっている部分は間取り図では点線程度でしか分からず、数cmの出っ張りで背の高い本棚や冷蔵庫が置けないことがあります。ここで測った「家具の上から天井までの高さ」は、入居後の地震対策(壁に穴を開けない家具転倒防止5選)で突っ張り棒のサイズを選ぶときに、そのまま使い回せます。
測る場所から逆算する計測グッズの選び方
価格は変動するため各商品ページでご確認ください。リンクをクリックしても、必ず購入する必要はありません(使い勝手や効果には個人差があります)。
金属製メジャーは「5.5m・幅25mm・ロック付き」
メジャーだけは、スマホでは代替できません。選ぶ基準は3つ。長さ5.5m(天井高や搬入経路の長い直線に対応)、テープ幅25mm(横に伸ばしてもテープが折れにくく、1人で長い距離を測れる)、ロック付き(測った状態で止めてメモできる)。タジマのGロック-25はこの3条件を満たす測定工具メーカーの定番で、メーカー公表仕様はテープ幅25mm×長さ5.5m・JIS1級目盛。名前のとおりロック付きです。▶ タジマ Gロック-25(5.5m×25mm)をAmazonで見る
レーザー距離計は「1人内見」の味方
天井高・部屋の対角・廊下の長い直線は、1人だとメジャーでは測りにくい場所です。レーザー距離計ならボタンひとつで壁から壁までを表示してくれます。ボッシュのEasyDistance 25は、メーカー表記で測定範囲0.14〜25m・レーザークラス2・重さ約70gのコンパクトタイプ。必須ではありませんが、複数物件を回る日ほど時短効果が大きい道具です。▶ ボッシュ EasyDistance 25をAmazonで見る
水平器は「床の傾き」を数字で見る
ビー玉を転がすより確実です。シンワ測定のブルーレベルJr.2(100mm)は質量70g・マグネット付き(メーカー公表値)で、内見バッグに入る最小クラス。床に直接置くほか、マグネットで金属建具に付けて建付けの傾きも確認できます。傾きが気になった部屋は、その場で管理会社に質問しておくと、あとで言った言わないになりません。▶ シンワ測定 ブルーレベルJr.2(マグネット付)をAmazonで見る
クリップホルダーは「立ったまま書ける」が正義
内見に机はありません。間取り図に採寸値を書き込むには、カバー付きのクリップホルダーが快適です。コクヨのクリップホルダー(A4)はカバーを360度折り返して立ったまま筆記でき、ペンホルダーと名刺ポケット付き(メーカー公表仕様)。担当者の名刺と図面を1冊にまとめて持ち歩けます。▶ コクヨ クリップホルダー A4をAmazonで見る
スマホで代替できる持ち物・できない持ち物
荷物は軽いほうがいい。そこで仕分けます。ライト・方位磁針・カメラ・メモ帳・簡易の水平器はスマホのアプリで代替可能です。方位はコンパスアプリで窓の向きを、日当たりは時間帯を変えた再訪かカメラの記録で補えます。一方、実寸を測るメジャーだけは代替が利きません。AR計測アプリは手軽ですが、数cm単位のズレが出ることがあり、防水パン内寸や搬入経路のような「数cmで勝負が決まる場所」には向きません。アプリはあくまで下見用、判定は金属メジャーで——が実務的な使い分けです。
採寸以外で宅建士が内見時に確認するポイント
寸法以外のチェックも、道具はほぼスマホだけで足ります。UR都市機構の内見ガイドでも挙げられている定番を中心に、実務でよく見るポイントを並べます。
- 水圧:キッチン・洗面・シャワーの蛇口を実際に開ける(空室は通水されているか事前に不動産会社へ確認)
- 電波:部屋の奥・水回りなど複数箇所でアンテナ表示を確認。建物に囲まれた部屋は弱いことがあります
- 騒音:窓を開けた状態と閉めた状態で聞き比べる。可能なら時間帯を変えて再訪
- におい・カビ:排水口のにおい、収納内部や窓際の結露痕
- コンセントとブレーカー:数と位置を間取り図に書き込む。アンペア数はURのガイドで一人暮らし20〜30Aが目安とされています
- 共用部:ゴミ置き場・駐輪場・ポスト周りの管理状態。掲示板の注意書きが多い物件は住民トラブルのサインのことも
写真は「部屋の四隅から全景→気になった箇所の寄り」の順で撮ると、帰宅後に見返しやすくなります。国民生活センターも入居時・退去時の写真・メモでの記録を勧めており、この習慣は退去時の原状回復トラブルの備えにもなります。
内見の持ち物に関するよくある質問
Q. 手ぶらで内見に行っても大丈夫ですか?
A. 見るだけならスマホがあれば成立します。ただし採寸ができないため、その物件に決めたくなったときに「もう一度内見の予約を取って測り直す」ことになりがちです。人気物件は再内見を待つ間に埋まることもあるので、最初からメジャーと間取り図だけは持っていくのがおすすめです。
Q. スリッパは不動産会社が用意してくれませんか?
A. 担当者が同行する内見では用意されることが多いです。一方、空室のセルフ内見や、1日に何件も回る場合は持参が安心です。100円ショップの折りたたみタイプや洗えるタイプなど、かさばらないもので十分です。
Q. メジャーは何mあれば足りますか?
A. 5.5mをおすすめします。天井高(2.4m前後が多い)や搬入経路、部屋の長辺まで1本でカバーでき、テープ幅25mmならたわみにくく1人でも測れます。3m級のコンパクトタイプは軽い反面、部屋の長辺で足りないことがあります。
Q. オンライン内見だけで決めても大丈夫ですか?
A. 遠方への引越しなどでは有力な選択肢ですが、国土交通省の住宅市場動向調査(令和7年度・三大都市圏の民間賃貸入居世帯)ではVR・ARツールでの内見経験は0.8%と、まだ少数派です。画面越しでは水圧・におい・騒音・傾きが確認できず、採寸も担当者頼みになります。利用する場合は、採寸してほしい箇所(防水パン内寸・カーテンレール・玄関幅など)をリストで事前に渡すと精度が上がります。
まとめ:測る場所5つ×道具の対応表
| 測る場所 | 使う道具 |
|---|---|
| 洗濯機置き場(防水パン内寸・蛇口高さ) | メジャー |
| 冷蔵庫置き場(3辺+コンセント位置) | メジャー+手持ち家電のサイズメモ |
| 窓まわり(カーテンレール基準) | メジャー |
| 搬入経路(玄関・廊下・エレベーター) | メジャー(+レーザー距離計で時短) |
| 天井高・梁下・床の傾き | メジャー+水平器(レーザー距離計があれば1人でも時短) |
内見で測った数字は、そのあともずっと働きます。カーテンや家具家電のサイズ選びは一人暮らしの最低限リストへ、天井高の実測値は家具転倒防止の突っ張り棒選びへ、そのまま引き継げます。そして気に入った物件が見つかったら、契約前に賃貸の初期費用を抑える方法で見積書のチェックを。測って、記録して、比べる——それだけで部屋探しの失敗はぐっと減らせます。


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